交通事故について
自動車の運転中、不注意によって、人身事故や死亡事故を起こしてしまった場合、過失運転致死傷罪が成立します。
そして、人身事故・死亡事故を起こしたにもかかわらず、救急車や警察官を呼ばなかった場合には、救護義務違反(ひき逃げ)となり、さらに重く処罰されることになります。
また、人身事故・死亡事故のうち、アルコールまたは薬物の影響によって正常な運転が困難な状態であった場合など、特に運転の態様が悪質で危険性が高いものについては、より重い危険運転致死傷罪が成立します。
過失運転致死傷罪の法定刑(法律で規定された刑)は、7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金となります(自動車運転死傷行為処罰法5条)。
ひき逃げの法定刑は、10年以下の懲役または100万円以下の罰金となります(道路交通法72条・117条2項)。
危険運転の法定刑は、怪我をさせた場合には15年以下の懲役であり、死亡させた場合には1年以上20年以下の懲役となります(自動車運転死傷行為処罰法2条)。
交通違反について
交通違反のうち、飲酒運転、無免許運転、時速30キロメートル以上のスピード違反などの違反点数が6点以上の交通違反をした場合には、懲役刑や罰金刑の対象となります。
他方で、時速30キロメートル未満のスピード違反や赤信号無視などの6点未満の交通違反をした場合には、一応制度上は懲役刑や罰金刑の対象となりますが、反則金の納付で終わることが多いです。
すなわち、6点未満の交通違反をした場合には、交通反則通告書(いわゆる青切符)の交付を受けることがあり、反則金を納付すれば、刑事上の責任を問われず、前科にはなりません。
反則金を納付しなかった場合には、その後、裁判手続に移行することとなりますので、その結果、懲役刑や罰金刑の判決を受ければ、前科がつくことになります(ただし、軽微な交通違反では、不起訴で終わることが多いようです)。
交通違反における法定刑は、重いものでは、飲酒運転の場合は5年以上の懲役または100万円以下の罰金、無免許運転の場合は3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
他方で、スピード違反の場合は6月以下の懲役または10万円以下の罰金、赤信号無視の場合は3月以下の懲役または5万円以下の罰金と、比較的軽いものもあります。
弁護活動について
交通事故の場合で、事実関係に争いがなければ、不起訴や略式命令(罰金)、起訴された場合には量刑の軽減を目指すことになります。
まずは、被害者や遺族に対する被害弁償や示談交渉を行うことが必須です(任意の自動車保険に加入している場合には、被害弁償は保険会社に委ねるのが通常ですが、別途見舞金を支払うことなども考えられます)。
また、警察署に任意出頭をするなどの真摯な対応をすることで、反省の意思を示すことも重要です。
そして、被害者が亡くなった場合には、葬儀や墓参りに出向くなども、有利な事情になります。
もっとも、被害者や遺族の被害感情が強く、被害弁償を受け取ってもらえないなどもあります。
そのような場合には、交通遺児団体などの慈善団体に贖罪寄付を行うこともよいでしょう。
一方で、交通事故の発生自体を争うことや、十分に注意をしても交通事故の発生を防ぐことができなかったなどの事情がある場合には、不起訴または無罪を目指すことになります。
また、ひき逃げの場合であっても、交通事故が発生したことについての認識がない場合には、ひき逃げ行為自体は犯罪とはならないため、事故現場の状況や事故当事者の言動などから、事故の発生を認識するのが困難であったことを主張・立証することになります。
他方で、交通違反のケースでは、前科がある場合や飲酒運転などの悪質な交通違反の場合には、不起訴や略式命令(罰金)では済まされず、起訴されて懲役の判決を受ける可能性が高いです。
飲酒運転で交通事故を起こしたなどの重大な事件では、執行猶予がつかずに実刑となることもあり、より慎重な対応が必要となります。
いずれにしても、自動車を処分して運転を自粛するとか、身内の厳重な監督下に置かれることを誓約するなど、周辺の環境を変えることで、再発防止に努める意思を示すことが重要となります。
また、交通違反による被害者がいない場合であっても、交通事故の場合と同様に贖罪寄付を行うことも、反省を示す方法として有効です。
刑事弁護の依頼を受けた弁護士は、以上を踏まえて、お客様のために最適な弁護方針を検討し、サポートさせていただくこととなります。
弁護士にご相談ください
刑事弁護において、取るべき方針はケースによって異なります。
まずは信頼できる弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
また、早い段階で弁護士にご依頼いただいた方が、対応の幅が広がりますので、より有利な結果を得る可能性が高まります。
交通事故・交通違反の刑事弁護についてお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。