背任事件を少しでも有利な形で解決するためには、背任罪・特別背任罪に関する法的な知識はもちろん、示談を目指した高い交渉力も必要となります。
背任事件に強い弁護士は、証拠集めや会社との示談交渉などを行ってくれるため、刑事弁護を依頼することで、自分に有利な形で事件を解決できる可能性が高まるでしょう。
このページでは、背任罪・特別背任罪の内容と刑事手続の流れを解説した後、背任事件における刑事弁護の方針と弁護士に依頼するメリットについて解説いたします。

1 背任罪・特別背任罪について

背任罪は、他人のためにその事務を処理する者が、自分や第三者の利益を図るか又は本人に損害を加える目的で、その任務に背いた行為をして、本人に財産上の損害を加えたことによって成立します(刑法第247条)。

会社の取締役、社会福祉法人や一般社団法人の理事など、組織運営に重要な役割を担っている者が背任行為をした場合には、より重い刑罰が定められています。

【背任罪】
5年以下の拘禁又は50万円以下の罰金(刑法第247条)

【特別背任罪】
株式会社の取締役等:10年以下の拘禁もしくは1000万円以下の罰金またはこれを併科(会社法960条)
社会福祉法人の理事等:7年以下の拘禁もしくは500万円以下の罰金またはこれを併科(社会福祉法155条)
一般社団法人の理事等:7年以下の拘禁もしくは500万円以下の罰金またはこれを併科(一般社団法人法334条)

過去の刑事裁判では、以下のような行為について、任務に背いた行為であるとして背任罪・特別背任罪が成立しています。
〇銀行員が回収の見込みのない不良貸し付けを行ったこと。
〇町村組合の理事がその職務上保管する公金を正規の手続によらずその町村組合の名義で不当に貸し付けたこと。
〇会社の取締役が、いわゆる「蛸配当」(配当できる剰余金がないにもかかわらず配当を行うこと)をしたこと。
〇百貨店が輸入した商品を愛人の経営する会社を介在させて売買差益を得させたこと。

2 背任事件における刑事手続の流れ

背任事件は、仮に逃亡のおそれがないとしても、証拠隠滅のおそれ(逮捕の必要性)があるとして、逮捕される可能性の高い事件であるといえます。

背任事件で逮捕されると、逮捕された日の翌日か翌々日に検察庁に行き、検察官の取り調べを受けることになります。
そして、ここでも、証拠隠滅のおそれ(勾留の必要性)から、検察官が勾留請求を行い、裁判所から勾留決定が出される(勾留される)可能性は高いといえます。
勾留されれば、少なくとも10日程度、一般的には20日以上警察署で身体拘束されることになります。
勾留後は、警察・検察の捜査や取り調べが本格化していきます。
そして、基本的には勾留の期間内に、検察官は公判請求(起訴)を行います。
公判請求(背任罪・特別背任罪で起訴)後は、保釈されない限り、身体拘束が継続されることになります。

背任事件の逮捕後の刑事手続の流れは、次のとおりとなります。

〇警察による逮捕、送検(事件を検察官へ引き継ぐ)

〇検察官の取り調べ(勾留請求するかどうかが判断される)、勾留請求

〇裁判官の勾留質問(勾留するかどうかが判断される)、勾留決定

〇勾留請求から10日間、もしくは20日間身体拘束される

〇検察官の公判請求(背任罪・特別背任罪で起訴する)

〇公判請求後は、保釈されない限り、身体拘束が継続される

3 背任事件における刑事弁護

(1)自白事件における刑事弁護の方針

背任罪は、財産に対する罪ですから、被害額の大小は刑事処分の行方に影響を与えます。
そして、侵害された財産(会社などに与えた損害)の回復の有無、すなわち被害弁償の有無が、処分や量刑に最も影響することになります。

そこで、背任行為を認める、すなわち自白事件の場合の刑事弁護としては、被害弁償や示談をすることで、不起訴処分の獲得を目指すことになります。
また、起訴されても、被害弁償や示談によって、執行猶予や減刑を目指すことになります。

被害弁償の有無が処分や量刑に最も影響することから、たとえ被害額が多額で一括払いによる完全な被害弁償が困難であっても、できる限りの範囲で被害弁償を行い、今後の被害弁償について具体的な分割払いの計画を立てていくことが重要です。
また、示談の成立が難しそうでも、少なくとも被害弁償金(の一部)を受け取ってもらえないか交渉することになります。

(2)否認事件における刑事弁護の方針

背任に全く心当たりがない、すなわち否認事件(冤罪事件)の場合の刑事弁護としては、証拠を集めて、自分に背任罪は成立しないことを明らかにすることで、不起訴処分あるいは無罪判決を勝ち取るための活動を行います。

その場合は、背任罪の成立の要件に沿って以下の点がポイントになるでしょう。
〇他人のため財産上の事務処理を行っていたか?
〇任務に背いた行為を行ったか?
〇自分や第三者が利益を図るか、または本人(会社など)に損害を与える目的があったか?
〇本人(会社など)に財産上の損害を与えたか?

(3)背任事件の解決を弁護士に依頼するメリット

さきほど述べたとおり、背任事件では、逮捕される可能性が高く、逮捕後の勾留についても、ほとんどがそのまま勾留され、身体拘束が続きます。
そのため、背任行為をしてしまった場合には、逮捕される前にすぐに弁護士に相談するのがよいでしょう。
逮捕前に、あるいは逮捕されてしまった場合でもすぐに相談があれば、弁護士は、取り調べに対するアドバイスや釈放に向けた弁護活動を迅速に行うことができます。

そして、先ほど述べたとおり、背任の事実を認める場合、被害者に対する被害弁償(示談)がとても重要なポイントになります。
この点で、日常的に示談交渉を行っている紛争トラブルの解決を専門とする弁護士が対応すれば、その高い交渉力により、示談が成立する可能性が高まります。

また、背任事件は、一般的に、犯行の状況、被害金額などの立証が難しく、捜査機関が立証に苦労することが多い犯罪です。
そこで、背任の事実を否認する場合において、背任罪・特別背任罪に関する法的な知識と立証のハードルを熟知している弁護士が対応すれば、捜査機関の証拠収集に不十分な点がないか検証し、これを主張することにより、嫌疑不十分で不起訴となる可能性を高めることができます。
そのためには、警察官や検察官のプレッシャーに耐えて、自白を取られないようにすることも大切であり、弁護士が頻繁に面会して、精神的にサポートすることも重要となってきます。

4 弁護士にご相談ください

刑事事件に巻き込まれた際に、「どのような弁護士に相談・依頼するか」ということは、非常に重要な問題です。
刑事事件には、民事事件と異なる刑事事件特有の知識や手続の理解、検察官による立証の程度を踏まえた対応が必要となります。
そのため、普段から刑事事件を取り扱っていない弁護士に相談・依頼するのはリスクがあるといえます。
刑事事件に関して相談・依頼する際には、刑事弁護の経験が豊富な弁護士に相談・依頼することをお勧めいたします。

刑事弁護の経験が豊富にある弁護士に相談・依頼いただけば、早い段階で弁護方針が固まり、弁護士がその弁護方針に沿ってすぐに行動し、示談や身体拘束の解放、嫌疑不十分による不起訴に向けた活動も迅速に行います。
そして、このことにより、警察・検察の処分や裁判所の判決が依頼者にとって有利になる可能性が高まります。
背任事件に巻き込まれた場合には、いち早く、刑事弁護の経験が豊富にある当事務所の弁護士に相談ください。

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