1 大麻事件に関する法律と刑罰

大麻に関しては、これまで、大麻取締法によって取り締まりがなされてきました。
もっとも、若年層における大麻の乱用が社会問題となっており、大麻使用が違法薬物使用への入り口となっていることを背景として、令和5年12月に法改正がなされました。
これにより、令和6年12月12日以降、大麻取締法は、大麻草の栽培の規制に関する法律と名称が変更となり、大麻事件に関しては、この大麻草の栽培の規制に関する法律と、麻薬及び向精神薬取締法が適用されることとなります。

大麻事件に関する刑罰は、以下のとおりです。

改正前(令和6年12月11日まで) 改正後(令和6年12月12日から)
施用(使用) 規定なし 7年以下の懲役
所持・譲受・譲渡 5年以下の懲役 7年以下の懲役
営利目的の所持・
譲受・譲渡
7年以下の懲役、又は、情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金の併科 1年以上10年以下の懲役、又は、情状により1年以上10年以下の懲役及び300万円以下の罰金の併科
栽培(製造)・輸入・
輸出
7年以下の懲役 1年以上10年以下の懲役
営利目的の栽培
(製造)・輸入・輸出
10年以下の懲役、又は、10年以下の懲役及び300万円以下の罰金の併科 1年以上の有期懲役、又は、情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金の併科

なお、大麻に関しては、大麻を由来とする成分を、医薬品として活用するニーズがあったことから、上記の法改正の際に、大麻草を原料とする医薬品を、医療目的で使用すること等に関しても、規定が設けられました。
もっとも、これはあくまで医薬品としての使用を前提とする規定であり、個人での使用は刑罰の対象となっています。

2 大麻事件の刑事手続きの流れ

(1)捜査段階での流れ

大麻事件で逮捕されると、逮捕から48時間以内に、事件が検察庁へ送検されます。
そして、事件を受け取った検察官は、被疑者から弁解を聞き、勾留する必要があると判断した場合には、事件を受け取ってから24時間以内に、裁判官に勾留請求を行います。
裁判官は、検察官からの勾留請求を受けて、勾留する必要があるかを判断するために、被疑者に対して勾留質問を行い、勾留する必要があると判断した場合には、勾留決定がされることとなります。

勾留期間は最大で10日間ですが、多くの大麻事件では、勾留する必要性があると判断され、10日の勾留決定がなされることが多いように思います。
そして、検察官の請求により、捜査の必要がある場合には、最大で10日間、勾留期間の延長をすることができることが法律上定められています。
大麻事件の場合、裁判官は、検察官からの10日間の勾留延長の請求を認めることが多いように思います。

そのため、大麻事件における捜査段階では、逮捕から勾留されるまでに72時間、その後勾留期間として最大23日間、身柄が拘束されると考える必要があります。

検察官は、勾留期間の間に、被疑者を起訴するかどうかを、捜査し、判断することとなります。
検察官において、大麻事件の証拠を確保できている場合には、起訴される可能性は高いでしょう。

(2)起訴後の流れ

検察官が被疑者を起訴した場合には、弁護人と協議し、公判段階での主張等の準備をしていくこととなります。
また、起訴された後は、弁護人と協議の上、裁判所に保釈金を納付することで身体拘束から一時的に解放してもらう、保釈の請求手続をしていくことを検討することとなります。

3 大麻事件の弁護方針

(1)罪を認めている場合

大麻事件において、罪を認めている場合には、大麻事件を犯してしまったことをきちんと反省してもらい、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、具体的な再犯防止策を考え、その環境を整えていくことが大切です。

具体的には、
・大麻の入手ルートを裁判官に包み隠さずに打ち明ける
・大麻関連の知人との縁を完全に断ち切る
・家族が同居して適切に監督する旨誓約する
・専門の治療機関や、薬物依存症に関する更生支援団体を利用する
といったことを行っていくことが考えられるでしょう。

(2)罪を認めていない場合

所持していた物が大麻だと知らなかったなどと主張し、大麻事件の犯罪成立要件を争うケースの他、捜査段階における証拠収集手続が違法であったことなどを主張し、犯罪成立に不可欠な証拠を裁判で提出させないという形式で争うこともあります。

所持していた物が大麻だと知らなかったなど、大麻事件の犯罪成立要件を争うケースでは、捜査の初期段階から、取調べに対してどのように対応していくべきかを、弁護士との間で協議し、その方針を明確に定めていく必要があります。
特に、取調べの際に作成される供述調書は、捜査機関による作文であり、実際に話したニュアンスとは異なる内容の書面が作成されていることも多いように思います。
供述調書が一度作成されてしまうと、後からこれを争っていくことは非常に困難となってしまいます。
そのため、できる限り捜査の初期段階で、弁護人と方針を決めて、活動していくことが大切であるといえるでしょう。

他方で、捜査段階における証拠収集手続が違法であったことなどを主張していくケースでは、違法だと考えられる捜査を特定し、この手続における違法性を具体的に主張していく必要があります。
そのため、捜査段階での各手続において、何か違和感や疑問点があれば、速やかに弁護人にその具体的な事情を共有しておく必要があるでしょう。

4 弁護士にご相談ください

ケースによって、取るべき弁護方針や、留意すべき事項も異なります。
まずは、専門的な知識を有する弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
大麻事件の刑事弁護についてお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。

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