1 少年事件とは
(1)少年とは?
少年とは、少年法によって20歳未満の者を指すと定義されています。
(2)少年事件とは?
少年事件とは、罪を犯したのが少年の場合の刑事事件のことです。
具体的には、犯罪少年、触法少年、ぐ犯少年について家庭裁判所が扱う事件のことをいいます。
(3)犯罪少年・触法少年・ぐ犯少年とは?
犯罪少年とは、罪を犯した14歳以上20歳未満の少年のことです。
触法少年とは、刑罰法令に触れる行為をしたが、その行為の時14歳未満であったため、法律上、罪を犯したことにならない少年ことです。
ぐ犯少年とは、18歳未満で、保護者の正当な監督に従わないなどの不良行為があり、その性格
や環境からみて、将来罪を犯すおそれのある少年のことです。
2 少年事件と成人犯罪の罰則の違い
(1)刑事処分と保護処分
一般の成人は刑事処分を受けることになる場合、刑事訴訟法に従って事実関係を審理され、裁判官の判決により刑事処分の内容が決められることになります。
一方で、少年事件では、刑事処分ではなく、少年を保護することに焦点が当てられています。
具体的には、少年の更生を図るために保護処分を行うかどうかが家庭裁判所によって判断されることになります。
保護処分の具体的な内容については後述いたしますが、家庭裁判所は、少年の立場に立って後見的に保護処分を行うかどうか、行う場合にどのような保護処分とするかを決めることになります。
(2)保釈制度の有無
少年事件には保釈制度がありません。
保釈制度とは、成人の刑事事件において、起訴後に保釈保証金を裁判所に納付して暫定的に釈放してもらう制度となります。
住居制限や被害者との接触禁止等、保釈条件が決められることもあります。
少年事件にはこの保釈制度がないため、いったん家庭裁判所に送致されて観護措置を受けた場合、少年鑑別所において調査や生活指導を受けることになりますが、家庭裁判所の審判が終わるまで少年鑑別所から出ることができません。
(3)手続きの非公開
成人の刑事裁判では手続きが公開されており、一般の人が傍聴できます。
一方で少年事件では少年のプライバシーに配慮するため、手続きは非公開となっています。
3 少年事件の手続きの流れ
少年事件の手続きは、以下のように進んでいきます。
(1)警察と検察官による捜査
まず、警察による捜査が行われる点は成人による刑事事件と同様となります。
警察による捜査が行われたあと、少年事件は検察官に送致されることになります。
基本的には在宅事件といって、身柄拘束なしで警察や検察官による捜査が進められることになります。
逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合には、逮捕・勾留により、少年の身柄拘束を行った上で捜査が進められることになります。
もっとも、勾留は逮捕と比較して長期の身柄拘束であり、少年事件で勾留が認められるのはやむを得ない場合に限られています。
勾留は成人の刑事事件と同じ警察署の留置施設で身柄拘束が行われることになるため、少年への悪影響が考慮されており、勾留に代わる観護措置が行われることがあります。
勾留に代わる観護措置では、少年の収容機能に特化した少年鑑別所で身柄拘束が行われることになります。
(2)家裁送致
送致を受けた検察官は、少年事件の全件について、必ず家庭裁判所に送致を行うことになります。
これを全件送致主義といいます。
成人による刑事事件のように、起訴猶予処分(犯罪事実は認められるものの諸般の事情を考慮して刑事手続きに載せないようにすること)は認められておらず、少年事件について後見的に判断する家庭裁判所に必ず送致するように決められています。
(3)家庭裁判所による調査ないし保護処分
検察官より送致を受けた家庭裁判所は、後述するように少年の環境等について調査を行い、保護処分をするかどうか、保護処分を行う場合にどのような保護処分を行うかを決めることになります。
調査のために必要がある場合には、観護措置決定が行われ、少年鑑別所に送致されることがあります。
(4)逆送
事件の送致を受けた家庭裁判所は、特に悪質性が高いと判断される少年事件について、検察官に逆送することができます。
逆送を受けた検察官は、事件について起訴が相当であると判断した場合には、成人による刑事処分と同様に、地方裁判所に少年事件を起訴することになります。
(5)刑事裁判
逆送の結果、起訴を受けた裁判所は、通常の成人事件と同様に、刑事事件として少年に対する刑事処分を決めることになります。
4 少年事件に対する保護処分
(1)保護処分の種類
保護処分は、保護観察処分、児童自立支援施設または児童養護施設への送致、少年院送致という3種類の処分に分かれます。
【保護観察処分】
保護観察処分とは、少年のこれまでの生活と同様に、家族と一緒に自宅において生活を続けながら、定期的に担当の保護司に対し日常生活の状況について報告を義務付けるものとなります。
【児童自立支援施設または児童養護施設への送致】
児童自立支援施設または児童養護施設への送致とは、鍵が掛かっていない施設において、一定期間、施設職員と一緒に日常生活を送りながら少年を取り巻く環境について調整を行うものであり、施設における生活指導が必要であると思われる場合に行われる処分となります。
【少年院送致】
少年院送致とは、保護処分のうちで最も重いものとなりますが、鍵が掛かった施設において、少年の更生のための矯正教育を行うことによって、非行に関与した少年を社会生活に適応させる必要があると認められる場合に行われる処分となります。
(2)保護処分の目的
いずれについても、少年の更生のための保護を目的とした処分であり、刑事処分のように制裁や罰を加えることを目的としていない点に注意が必要です。
(3)家庭裁判所調査官の役割
これらの保護処分を決める家庭裁判所においては、家庭裁判所調査官が大きな役割を果たします。
調査官とは、心理学、教育学、社会学などの専門知識を有する国家公務員であり、裁判官の命を受けて、少年本人やその家族と面接を行い、事件の背景や少年の生育歴等について専門的な観点から調査を行い、報告書を作成します。
この報告書は保護処分の内容に関する調査官の意見が記載されており、保護処分を決めるのは裁判官ですが、保護処分の内容はほとんどが調査官の意見に従って決められることになります。
そのため、調査官による調査においては、真摯に反省している態度を見せる等、適切に対応をする必要があります。
(4)審判不開始・不処分
家庭裁判所はこのような調査官による報告を受けて、保護観察処分、児童自立支援施設または児童養護施設への送致、少年院送致の3つの保護処分から、適切な処分を行うことになります。
もっとも、審判不開始・不処分というように、そもそも家庭裁判所が保護処分を行わないことも多く見られます。
【審判不開始】
審判不開始とは、調査の結果、審判に付することができず、又は審判に付するのが相当でないと認めるときに行われる決定となります。
証拠上非行事実の存在の蓋然性が認められない場合や、少年が所在不明の場合、少年が別件の事件で保護処分を受けており、追加で保護処分を行う必要がない場合等に審判不開始となることが考えられます。
【不処分】
不処分とは、審判の結果、保護処分に付することができず、又は保護処分に付する必要性がないと認めるときに行われる決定となります。
不処分においては、審判不開始決定と異なり、審判は開かれることになります。
審判は開かれたが、非行事実が認められない場合や、少年に更生の兆候が見られ保護処分に付するまでの必要性がない場合等に、不処分とされることが考えられます。
5 少年院に送致されないためには
前述したように少年院送致は保護処分の中でも最も重い処分となりますので、可能であれば避けたい保護処分であるといえます。
少年院送致を回避するためには、被害者がいる犯罪の場合には、その被害者と示談することが重要となります。
示談とは、被害者に対して適切な金額の損害賠償を行い、一方で被害者が刑事事件について加害者を許すという内容での合意を行うことをいいます。
成人の刑事事件についても当てはまることですが、少年事件においてもこの示談の成否が保護処分の決定に大きく影響を与えることになります。
そのため、被害者と示談を成立させることが重要となりますが、一般の方が被害者と直接示談交渉を行うことは、被害者が連絡・接触を拒否するなどの実情から困難なことが多いです。
この点、専門資格を有する弁護士であれば、被害者との示談交渉の席に付けることが多く、反省の状況や謝罪の意思について真摯に話を伝えることにより、示談成立の可能性が高まります。
また、示談を成立させることに加えて、少年審判の場において、弁護士が付添人として保護処分の内容について意見を述べることができます。
この付添人の意見においても、弁護士は事案の性質や反省の状況等、少年の生育歴等について適切な主張を行い、より有利な処分の獲得に向けて活動していくことになります。
6 弁護士にご相談ください
少年事件の対応には専門的な知識と経験が必要となりますが、少年事件に精通した弁護士であれば適切に対応することができます。
少年事件についてお困りの方は、当事務所の弁護士にご相談ください。
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