1 放火とは

目的物に点火し、これを焼損した場合には、放火罪などの犯罪が成立します。

ここにいう焼損とは、火が媒介物を離れて目的物が独立して燃焼する状態に達したことを意味します。
例えば、燃料を使用して建造物に点火する事例だと、燃料だけが燃えている状態から、床や壁、天井などの建物の構造物に火が燃え移った状態がこれにあたります。

ただし、焼損に至らない場合でも、火を点けた時点で放火未遂罪が成立します。

具体的に成立する犯罪は、目的物の種類等に応じ、次のとおり分類されます。

(1)現住建造物等放火

人が住居にしている、または人が現にいる建造物等に対する放火については現住建造物等放火罪が成立します。

現住建造物等放火は公共に対する危険を生じさせるのみならず、実際に居住・所在している人の生命身体に対する危険も生じさせる重大な犯罪です。
そのため、放火罪の中でも最も重い罰則が定められており、また、裁判員裁判の対象にもなります。

(2)非現住建造物等放火

人が住んでおらず、かつ、現に人がいない建造物等に対する放火には非現住建造物等放火罪が成立します。

ただし、自己の所有する物に対する放火の場合は別段の定めがあり、法定刑が軽く、また、公共の危険を生じていないときであれば犯罪は成立しないものとされています。
ここにいう公共の危険とは、火が他人の生命や身体に害を加えたり、建造物等やそれ以外の物に燃え移ったりする危険性を意味し、このような公共の危険を発生させることが、たとえ自己の物に対する放火であっても放火罪として処罰する根拠となっています。

(3)建造物等以外放火

上述の建造物等以外への放火については建造物等以外放火罪が成立します。
具体例としては、建造物自体にはあたらない門や塀などの構造物や自動車、ゴミ箱といった物への放火が考えられます。
また、公共の危険を生じさせたことが建造物等以外放火の要件となっており、公共の危険が生じていない場合にはこれより軽い罪である器物損壊罪が成立することになります。

なお、非現住建造物等放火の場合と同様、自己の所有する物に対する放火の場合は法定刑が軽くなります。

(4)延焼

自己所有の物に対する放火であっても、結果としてそれ以外の客体、すなわち自己所有ではない現住建造物等や非現住建造物等、建造物等以外への延焼がある場合には延焼罪が成立します。
延焼罪の法定刑は、現住建造物または非現住建造物等への延焼の場合と、建造物等以外への延焼の場合で差が設けられています。

2 放火の罰則

現住建造物等放火:死刑または無期もしくは5年以上の拘禁刑
非現住建造物等放火:法定刑は2年以上の有期の拘禁刑(自己所有の場合6月以上7年以下の拘禁刑)
建造物等以外放火:1年以上10年以下の拘禁刑(自己所有の場合1年以下の拘禁刑または10年以下の罰金)
延焼:3月以上10年以下の拘禁刑(建造物等以外への延焼の場合3年以下の拘禁刑)

3 放火事件の刑事手続の流れ

刑事手続の流れは、被疑者を逮捕・勾留する身柄事件と、逮捕・勾留しない在宅事件に分けられます。

身柄事件になるのは被疑者に証拠隠滅のおそれや逃亡のおそれが認められる場合であるところ、放火事件は、重大な事件であるほか、現場の物証が燃えてしまい、証拠の収集が難しいという性質がありますので、身柄事件になる可能性が高いといえるでしょう。

身柄事件の場合は、現行犯逮捕の場合を除き、捜査機関において被疑者を特定するための捜査を行い、嫌疑が固まった時点で被疑者を逮捕します。
その後、逮捕・勾留を合わせて最長23日の身体拘束を受けることになり、この期間においてさらなる捜査が尽くされたうえで、概ねその満期に合わせて検察官が処分を決定します。

ここにいう処分とは、起訴、略式起訴、不起訴の3種類です。
起訴とは正式な裁判を行うこと、略式起訴は簡易な手続きで罰金のみを付すこと、不起訴とは起訴や略式起訴を行わないことをいいます。
放火事件の場合は、罰金の対象となるのが建造物等以外への放火かつ自己所有のときだけですので、不起訴相当のよほど軽微な事案でない限り、起訴される可能性が高いと考えられます。

4 放火事件の刑事弁護のポイント

(1)否認事件

犯人の特定が容易ではない放火事件では、全く身に覚えがないのに被疑者にされてしまうという事態が生じないとは言い切れません。
しかし、被疑者にされてしまうと、自白を引き出すために捜査機関から執拗な取り調べを受けることになる可能性があります。

このようなケースでは、まず、取調べに適切に対応し、被疑者として逮捕・勾留されないことや、起訴を避けることが重要となります。
取調べへの対応としては、黙秘権を行使することや、話すのであれば事実のみを正確に話すことが必要となりますが、そのような対応は突然に放火の嫌疑をかけられた身としては必ずしも容易ではありませんので、弁護士と相談しながら慎重に行っていくのがよいでしょう。

また、それでも起訴されてしまい、裁判になってしまったケースであれば、裁判で犯人と認定されないための弁護活動を行うことになります。
具体的には、検察官請求証拠について採否や信用性の面で争ったり、自身に有利な証拠を調査・提出したりしたうえで、自身が犯人ではないことについての合理的な説明を行っていく必要があります。

そのほか、事案によっては公共の危険の発生の有無やこれに対する故意といった法的な評価の側面で争うべきであることもあります。

(2)自白事件

放火の事実に間違いがないのであれば、できるだけ処分を軽くするための弁護活動を行うことになります。

最も重要なのが被害者との示談であり、焼損箇所が少ない場合や、建造物等以外への放火・延焼の場合などの被害弁償が可能な事案であれば、被害弁償を行って示談することを検討すべきです。
ただし、放火という重大事件の被害者は必ずしも示談に応じやすい心情にはないため、被害弁償が可能な事案でも慎重な交渉が必要となります。
また、建造物の相当部分が焼損している事案などでは、全額の被害弁償を行うことが現実的ではないことも考えられますが、一部の弁償でもできないかを検討すべきでしょう。

そのほか、事案に応じて、再犯をする可能性がないことを訴求していくことが考えられます。
具体的には、取調べや裁判できちんと反省を示していくのはもちろんのこと、家族などに監督者になってもらう、放火の動機に精神疾患などが影響している場合には診療を受けるといった対応があります。

また、放火事件の発生や自身がその犯人であることが捜査機関に発覚する前であれば、自首を検討することになります。
自首をすることで、法律上、刑の軽減を受けられる可能性があります。

5 弁護士にご相談ください

放火事件は重大な犯罪であり、裁判になる可能性も高いことから、できるだけ早期に弁護士に相談いただき、慎重かつ適切に対応していくことをお勧めいたします。
放火事件についてお悩みでしたら、当事務所までご相談いただければと存じます。

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