1 淫行とは?

(1)淫行の意義

淫行とは、18歳未満の青少年に対し、みだらな性行為または性交類似行為を行うことをいいます。
淫行は各都道府県の青少年保護育成条例によって処罰の対象とされています。
青森県の場合、青森県青少年健全育成条例第22条1項により、淫行またはわいせつ行為が禁止されており、その他の都道府県でも同じ内容の条例で罰せられることになります。
淫行は、本人同士の同意があったとしても処罰の対象とされていますが、双方が青少年の場合には処罰の対象とされません。
淫行という言葉の意味は、広く青少年に対する性行為一般を指すものではなく、限定的に解釈されています。
裁判所によれば、「淫行」とは、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔しまたは困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交または性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交または性交類似行為を指すものとされています(最高裁昭和60年10月23日)。
この裁判所の判決は、「淫行」という表現が不明確であることを避けるため、限定的に解釈を行っており、要するに青少年一般に対する性行為が全て処罰の対象とされているわけではない、という意味合いとなります。

青少年に対しこの定義に当てはまる淫行を行った場合、各都道府県の条例によって処罰の対象とされます。
裁判所は「淫行」の意義について限定的な解釈をしているものの、真剣交際であると主張した場合であっても、認められにくい傾向にあります。
特に年齢差がある場合、年齢が近い男女に比べて淫行と認定されやすい傾向にあります。
また、会うたびに性行為のみを内容としたデートを行っている場合、淫行と認定されやすい傾向にあります。
このように、互いに好意がある同意に基づく性行為であっても、処罰の対象にならないかどうか慎重に行動する必要があります。

(2)淫行に関連する犯罪

厳密には淫行の定義には含まれませんが、関係する犯罪についても簡単にご説明いたします。
暴行や脅迫を用いることによって被害者が同意を拒否できない状況にさせ、性行為を行った場合、刑法177条1項の不同意性交罪や、刑法176条1項の不同意わいせつ罪が成立することになります。
なお、16歳未満の未成年者と性行為を行った場合、暴行や脅迫が用いられていない場合であっても、不同意性交罪や不同意わいせつ罪による処罰の対象となります。
さらに、児童福祉法第34条1項6号では児童に淫行をさせること、児童買春・児童ポルノ禁止法第4条では児童買春をすることが処罰の対象とされています。

2 淫行事件の罰則

青森県の場合、淫行を行った者は2年以下の拘禁または100万円以下の罰金の対象となります。
量刑の傾向としては、前科前歴がない初犯の場合、罰金刑となることが多く見られます。
同種の前科がある場合には、公判請求され拘禁の実刑判決が宣告されることがあります。
また、不同意性交罪は5年以上の拘禁、不同意わいせつ罪は6月以上10年以下の拘禁となります。
さらに、児童福祉法60条1項により、児童に淫行させることは10年以下の拘禁もしくは300万円以下の罰金の対象とされています。
児童買春・児童ポルノ禁止法4条により、児童買春をした者について、5年以下の拘禁または300万円以下の罰金の対象となります。

3 淫行事件における刑事手続の流れ

淫行が発覚する典型的なパターンとしては、淫行の被害を知った保護者が警察に相談することや、未成年者が別件で補導された際にスマートフォンのデータが確認されること等により、淫行についても発覚することが多く見られます。
たとえ双方の当事者に好意があっても淫行は処罰の対象となりますので、様々なきっかけで刑事事件化することになります。

淫行事件が警察に発覚した場合、逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断される場合、逮捕されることがあります。
逮捕された場合には、逮捕から48時間以内に検察官に事件が送致されることになります。
送致を受けた検察官は、24時間以内に裁判官へ勾留請求をするかどうか、判断をします。
勾留請求を受けて裁判官が勾留を認める場合には、勾留請求から10日間、勾留されることになります。
10日間の勾留後、さらに10日を限度として勾留の延長がされることがあります。
勾留の延長は、関係者や被疑者の取調べの必要性、その他の捜査の必要性があって、やむを得ない事情がある場合に認められることになります。
この勾留期間中に、検察官は起訴するかどうかの判断をすることになります。
起訴された場合、裁判所は有罪無罪の判断を行いますが、罰金刑の場合には、略式起訴といった簡易的な方法による判決がされることがあります。
この略式起訴は、被疑者の同意がある場合に、原則的に起訴されてから即日、罰金刑の言渡しを受けることになります。
略式起訴ではなく、正式の裁判となった場合、起訴前勾留が起訴後勾留に切り替わり、自動的に勾留が継続することになります。
もっとも、起訴後勾留の場合には、保釈請求をすることができますので、保釈が裁判官に認められることにより、暫定的に身柄を解放してもらうことができます。

4 淫行事件における弁護活動

淫行は厳密には被害者保護を目的とした犯罪ではなく、社会全体の利益を保護するための犯罪ですが、未成年者及びその親権者には重大な精神的苦痛を生じさせることになるでしょう。
未成年者と示談し慰謝料を支払うことにより、その精神的苦痛を低下させたものと評価され、有利な刑事処分に繋がります。
そこで事実関係に争いがない場合には、弁護士は示談成立に向けて活動していくことになります。

事実関係に争いがある場合には、まずは不起訴処分を目指し、仮に起訴された場合には無罪判決を目指して活動していくことになります。
淫行の刑事事件で事実関係を争う場合、多く見られるのは、未成年者の年齢を知らなかったという主張です。
年齢を知ることができなかった場合には、犯罪は成立しないことになります。
もっとも、淫行には過失犯の処罰も定められていることがありますので、検察官が過失の淫行も主張する場合には、年齢を知らなかったことについて過失がなかったことも主張していくことになります。
青森県青少年健全育成条例においても、第31条で「青少年の年齢を知らなかったことを理由として処罰を免れることができない。ただし、青少年の年齢を知らないことについて過失がないときは、この限りではない。」との規定が設けられていますので、過失がある場合にも淫行は処罰されることになります。
そのため過失がなかったことも積極的に主張していく必要があります。

淫行が発覚し、逮捕されて実名報道される場合もあります。
実名報道がされることにより、家族や職場に知られ、大きな社会的不利益を受けることになります。
示談が成立している場合には、証拠隠滅や逃亡の恐れが低くなったものと判断され、逮捕されるリスクをできる限り減らすことができます。
このように依頼を受けた弁護士は、逮捕前に早期に示談を成立させ、逮捕を防ぎ、逮捕に伴う実名報道を回避することに努めます。

5 弁護士にご相談ください

淫行事件の刑事弁護においては、示談を中心とした迅速な対応が必要なため、できる限り早期に弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。
淫行事件の刑事弁護についてお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。

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