1 危険運転致死傷とは

危険運転致死傷罪とは、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転致死傷処罰法」と言います。)の第2条及び第3条に規定されている以下の類型の運転行為をすることにより、人を死傷させた場合に成立する犯罪のことを言います。

具体的には、以下の10類型になります。
①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為
②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為
③その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑤車の運転を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険が生じることになる速度で走行中のものに限る)の前方に停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
⑥高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為
⑦赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
⑨アルコール又は薬物の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、そのアルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状況に陥った状態で運転する行為
⑩一定の統合失調症、てんかん、失神、低血糖症、そううつ病、睡眠障害といった病気の影響により、その走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で、自動車を運転し、よって、その病気の影響により正常な運転が困難な状況に陥った状態で運転する行為

このように、危険運転致死傷罪は10類型が定められていますが、大きく、ⅰアルコール又は飲酒等の影響下での走行(①、⑨、⑩)、ⅱ制御不能な状況下での走行(②、③)、ⅲいわゆるあおり運転での走行(④、⑤、⑥)、ⅳ法令を無視した走行(⑦、⑧)、と分けると整理しやすいと思われます。

2 危険運転致死傷の刑罰

①から⑧の類型は、事故前から「正常な運転が困難な状態」であることを分かっていながら、あえて運転をして事故を起こした場合に危険運転致死傷罪が成立することになります。
これに対し、⑨、⑩については、後から見ると、正常な運転をすることができる状態にはなかったにもかかわらず、運転中は正常な運転ができると思っていて運転したものの、その結果、事故を起こしてしまった場合に危険運転致死傷罪が成立する、という違いがあります。

このような違いから、①から⑧の類型の場合には、その法定刑は、人を負傷させるに留まった場合は15年以下の拘禁刑、死亡させた場合には1年以上20年以下の拘禁刑と定められています。
これに対し、⑨、⑩の類型の場合には、その法定刑は、人を負傷させるに留まった場合は12年以下の拘禁刑、死亡させた場合には15年以下の拘禁刑、というように差が設けられています。
なお、いずれの類型であっても、それが無免許であった場合には、刑が加重され
ます。

3 危険運転致死傷と過失運転致死傷の違い

一方で、過失運転致死傷罪は、自動車運転致死傷処罰法第5条に定められている犯罪であり、その犯罪成立要件は、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって、人を死傷させた」ことになります。
つまり、無過失であった場合を除き、自動車の運転で人を死傷させると過失運転致死傷罪が成立します。

このように、自動車の運転によって人を死傷させた場合に、危険運転致死傷罪が適用されるか、過失運転致死傷罪が適用されるかの違いは、その運転の態様が①から⑩に該当するのかどうかという点になります。

このような違いから、過失運転致死傷罪の法定刑は、7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、というように、危険運転致死傷罪の法定刑との間に大きな差があります。

4 危険運転致死傷事件の刑事手続きの流れ

危険運転致死傷事件は、過失運転致死事件と異なり、極めて悪質な部類に属する犯罪です。
そのため、危険運転致死傷事件が発生した場合は、前科・前歴のない初犯であったとしても、原則として、その運転手は逮捕されます。
そして、勾留後も勾留延長される上、ほとんどの場合起訴されます。

ただし、危険運転致傷事件の場合には、怪我の程度や危険運転の内容・態様は事件ごとに様々であるため、起訴後に保釈が認められたり、執行猶予判決となったりするケースは珍しくありません。
これに対し、危険運転致死事件の場合には、ほぼすべての事件で実刑になる傾向となっており、保釈はほぼ認められません。
そのため、逮捕された後は、長期の勾留を経て、裁判となった後は、そのまま刑務所に収監される可能性が高い犯罪類型です
なお、危険運転致死事件は、裁判員裁判対象事件となります。

5 危険運転致死傷の刑事弁護のポイント

危険運転致死傷罪は、前述のとおり、①から⑩の類型に該当しなければ成立しない犯罪となります。
つまり、大まかに言うと、危険運転致死傷罪が成立するかどうかは、「正常な運転が困難」な状況だったのかどうかによります。
そして、危険運転致死傷罪か過失運転致死傷罪かどうかで、法定刑が大きく変わってくることは前述したとおりです。

このようなことから、弁護士としては、まず一番に、「正常な運転が困難」ではなかったとして、過失運転致死傷罪の成立に留まる旨を主張していくことになります。
過失運転致死傷罪に留まる場合、そのまま起訴される可能性は高いですが、勾留の必要性がなくなったり、保釈が認められたりする可能性が格段に上がるとともに、執行猶予判決を得られやすくなります。

また、いずれの犯罪が適用になるかにかかわらず、被害者やその遺族と示談をすることを試みます。
通常は、運転手側が対人賠償保険に加入していることがほとんどであると思われるため、金銭面の大部分は保険によって賄うことになるかとは思いますが、それとは別に、被害者に対する謝意を示すために、被害者やその遺族へ示談を申し入れることは大切です。

6 弁護士にご相談ください

周知のとおり、凄惨な交通事故が起きるたびに、危険運転致死傷罪の適用を訴える声が挙げられます。
このようなことから、運転手やその家族は、多大なバッシングを受けることは想像に難くないでしょう。

他方で、このような訴えやバッシングとは裏腹に、危険運転致死傷罪の適用のハードルの高さが問題になっています。
その原因は、法律上の要件である「正常な運転が困難」というものが抽象的過ぎて、その適用範囲の外延が不明確であることに起因していると考えられます。
そのため、実際には、危険運転致死傷罪ではなく、過失運転致死傷罪に留まるというケースは数多く存在します。
もっとも、運転手やその家族がそのような法的知識を有していないことがほとんどでしょう。

また、被害者やその遺族に対する賠償も自分たちで対応するのは、相当に骨が折れることであると思います。
中には、話すら聞いてくれない方もいるでしょう。

このように、危険運転致死傷罪で検挙された場合、弁護士のサポートなしに刑事手続きを進めていくことが困難な犯罪類型です。
しかも、事件のことだけでなく、日常生活への対応をしなくてはならないことを考えると、ほぼ不可能に近い状態であると思われます。

そのため、危険運転致死傷罪で検挙された場合には、早期に今後の見通しを立てるべく、速やかに弁護士に相談し、弁護士とともに弁護方針を決めることが不可欠です。
当事務所では、刑事事件を得意とする弁護士が在籍しており、早い初動で事件に取り組むことができます。
危険運転致死傷罪について、不安・疑問がある方は、お気軽に当事務所にご相談ください。

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