1 横領罪について
(1)単純横領罪
自己の占有する他人の物を横領することは単純横領罪にあたります。
より詳細な定義としては、他人の所有物について、当該他人から委託を受けて占有している状況において、これが自分の物でなければできないような行為をすることを指します。
具体的には、他人から預かった金銭を使用する行為や、他人から預かった物を売却する行為などがこれにあたります。
単純横領罪の法定刑は5年以下の拘禁刑です。
なお、横領の態様によっては窃盗に近いものもありますが、これは行為者が委託を受けて占有しているものかによって峻別されます。
そのため、例えば職場の物を取得する行為であっても、行為者が管理する地位にある物であれば横領、あくまで職場や他の従業員が管理する物であれば窃盗という区別になります。
(2)業務上横領罪
業務上占有する他人の物を横領した場合は、単純横領罪ではなく業務上横領罪が成立します。
そのため、財産を預かる業務に従事している場合に成立する犯罪であり、具体的には、経理担当者による会社の預金の領得、集金担当者による集金した現金の領得といったケースがこれにあたります。
業務上横領罪は、単純横領罪と比較したときに、業務上の信頼に背いて横領行為に及んでいるという点で悪質であることから、法定刑が重く、10年以下の拘禁刑とされています。
(3)遺失物等横領罪
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領することは遺失物等横領罪にあたります。
窃盗罪に近い犯罪ですが、他人が占有している物を盗むのが窃盗罪、誰も占有していない物を領得するのが遺失物等横領罪です。
遺失物等横領罪の法定刑は1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金または科料です。
2 横領事件における刑事手続の流れ
横領事件の端緒として、捜査機関に対する被害届の提出等により横領事件の捜査が開始します。
その際、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれといった要件を満たす場合には、逮捕・勾留による身柄拘束がされます。
横領罪には様々なものがありますが、主に業務上横領罪など、行為者の地位を利用して巧妙に横領を行ってきた場合には、罪証隠滅の余地があるものとして、逮捕・勾留がされる可能性が高いでしょう。
また、逮捕・勾留には最長23日という制限時間があるのですが、横領事件を繰り返してきた場合、余罪による再勾留が繰り返され、長期にわたって身体拘束を受ける可能性もあります。
その後、逮捕・勾留がされた事件ではその満期に、逮捕・勾留がされていない在宅事件であれば捜査が完了した時点で、検察官において、起訴・不起訴等の判断をします。
犯罪によっては罰金を科して早期に釈放となる略式起訴という選択もありますが、単純横領罪・業務上横領罪には罰金刑が定められておらず、起訴・不起訴の2択になります。
そのため、よほど軽微な事案であるとか、後述の示談による十分な解決がされているといった事案でなければ起訴される可能性が高いといえるでしょう。
3 横領事件における刑事弁護
まず、横領の事実に間違いがあれば、適切な捜査対応や刑事裁判における弁護活動により、不起訴や無罪を目指すことになります。
次に、横領の事実に間違いがない事案であれば、不起訴や執行猶予付き判決といったより軽い処分を目標とした弁護活動を行うことになります。
最も重要となるのが被害者との示談です。
被害を補填しつつ、被害者に宥恕いただくことが刑事処分では非常に重視されます。
なお、横領事件においては、被害者は信頼を裏切られた立場にあることから、示談を成立させるには適切に謝意を示し、被害者の心情にも配慮した示談交渉が求められるでしょう。
並行して、逮捕・勾留がされている事案であれば、身体拘束からの解放も重要となります。
そのために、勾留段階での準抗告や、起訴後の保釈請求といった各種手続きを行うことになります。
4 弁護士にご相談ください
横領事件は、逮捕・勾留や起訴の可能性の高い重大な事件ですので、できるだけ早期に、専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。
横領事件についてお悩みでしたら、まずは一度、当事務所までご相談いただければと存じます。
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