1 住居侵入罪・建造物侵入罪とは
住居侵入罪・建造物侵入罪は、正当な理由がないのに、人の住居、または人の看守する邸宅、建造物、艦船に侵入したときに成立する犯罪です。
住居侵入罪・建造物侵入罪は、刑法第130条で定められており、3年以下の拘禁、または10万円以下の罰金が科せられます。
また、退去の要求を受けたにもかかわらず居座ると、同じ刑法第130条の不退去罪に該当します。
住居侵入罪の「住居」は、一戸建てやマンションなど、日常生活に使用するために人が居る場所を指します。
マンション(共同住宅・集合住宅)のうち、1階出入口、エレベーター、外階段踊り場、屋上などの共有部分も住居にあたります。
建造物侵入罪の「邸宅」の例としては、空き家や閉鎖中の別荘などがあり、「建造物」の例としては、官公署の庁舎、銀行、学校、工場、事務所、倉庫、スーパーマーケット、商業施設などがあります。
さらに、「看守する」とは、人が事実上管理・支配していることで、施錠して鍵を保管している状態や、管理者がその場所に居て管理している状態などが挙げられます。
したがって、例えば、放棄された空き家への侵入は、建造物侵入とは見なされません。
建物に入っただけだから軽い処分で済むだろうと考える人もいるかもしれません。
しかし、侵入の目的によっては他の犯罪に問われるケースも多く、予想していたよりずっと重い処分となる可能性があります。
具体的には、窃盗、のぞき、盗撮、ストーカーなどによる処分が考えられます。
他の犯罪に問われるケースを含め、できる限り軽い処分を求めるためには、早期の弁護活動が必要です。
このページでは、住居侵入罪・建造物侵入罪における刑事手続の流れや、弁護活動について詳しく解説いたします。
2 住居侵入罪・建造物侵入罪の処分の傾向
住居侵入罪・建造物侵入罪は、犯罪の内容や前科の有無によって処分の程度が変化します。
初犯で、他の犯罪の目的がなく、単に建物へ侵入しただけであれば軽い処分になる傾向があります。
この場合は、逮捕されても不起訴が多く、重くても罰金刑(略式罰金処分)で済むケースが一般的です。
一方、他の犯罪を兼ねた犯行であれば、処分は重くなります。
例えば、空き巣などの住宅内の金品を盗むために侵入したら、窃盗罪が成立します。
窃盗罪の刑罰は10年以下の拘禁、あるいは50万円以下の罰金ですので、住居侵入罪よりも重いです。
そして、複数の犯罪が成立する場合、重い刑罰の範囲内で処分を決めますので、他の犯罪が目的の犯行は、処分が重くなるわけです。
他の犯罪を兼ねた犯行の例としては、のぞきをする目的で他人の家に侵入する、万引き目的でコンビニやデパートに立ち入る、盗撮を行うためにデパートのトイレに忍び込むケースがあります。
さらに、侵入すること自体が目的であったとしても、再犯の場合は刑罰が厳しくなると考えられます。
3 住居侵入罪・建造物侵入罪における刑事手続の流れ
住居侵入罪・建造物侵入罪は、通報を受けて駆け付けた警察官により現行犯逮捕される場合がある犯罪といえます。
特に住居侵入罪の場合は、被害者と接触する可能性があることや住居侵入以外の目的を有していたことなどから、逮捕される可能性が十分にあります。
さらに、他の犯罪(侵入の目的)を兼ねた犯行であれば、目的となった他の犯罪の容疑が固まった段階で、再逮捕される可能性があります。
住居侵入罪・建造物侵入罪事件で逮捕されると、逮捕された日の翌日か翌々日に検察庁に行き、検察官の取り調べを受けることになります。
そして、ここでも、他の犯罪を兼ねた犯行であれば、検察官が勾留請求を行い、裁判所から勾留決定が出される(勾留される)可能性は高いといえます。
勾留されれば、少なくとも10日程度、一般的には20日以上警察署で身体拘束されることになります。
勾留後は、警察・検察の捜査や取り調べが本格化していきます。
そして、基本的には勾留の期間内に、検察官は公判請求(起訴)を行います。
公判請求(起訴)後は、保釈されない限り、身体拘束が継続されることになります。
他の犯罪(侵入の目的)による再逮捕・再勾留については、例えば、女性用トイレに侵入したことで建造物侵入罪の容疑で現行犯逮捕された後、捜査活動が実施される中で盗撮などの迷惑防止条例違反の容疑が固まった場合には、再逮捕・再勾留によって身体拘束の期間が長期化する可能性があります。
住居侵入罪・建造物侵入事件の逮捕後の刑事手続の流れは、次のとおりとなります。
〇警察による逮捕、送検(事件を検察官へ引き継ぐ)
↓
〇検察官の取り調べ(勾留請求するかどうかが判断される)、勾留請求
↓
〇裁判官の勾留質問(勾留するかどうかが判断される)、勾留決定
↓
〇勾留請求から10日間、もしくは20日間身体拘束される
↓
〇検察官の公判請求/または略式罰金処分/または他の犯罪行為で再逮捕・再勾留
↓
〇公判請求後は、保釈されない限り、身体拘束が継続される
4 住居侵入罪・建造物侵入罪における弁護活動
住居侵入罪・建造物侵入罪で逮捕・起訴されないためには、弁護士への相談・依頼が大切です。
ここでは、依頼を受けた弁護士が具体的にどのように弁護活動をするのかについて解説いたします。
(1)被害者に対する示談活動
住宅・建造物に侵入された被害者と、弁護士が示談交渉を進めます。
他の犯罪と比べても、住居侵入罪・建造物侵入罪は、示談が成立すれば不起訴になる可能性が高いと言えます。
もっとも、のぞき、盗撮、ストーカー目的の侵入の場合、被害者の処罰感情は強いと考えられます。
さらに、そのような目的があった場合の被害者は、加害者とやり取りすることを拒否することがほとんどですので、弁護士を通して、被害者と示談交渉をしていくことが必要となります。
弁護士は、警察官または検察官に対して、被害者の連絡先を教えてもらうよう要請し、連絡先が伝えられたら、被害者と示談交渉を進めていきます。
その中で弁護士は、被害者の処罰感情を和らげて交渉し、目的となった他の犯罪が成立する場合にはその犯罪の示談交渉も並行して進めます。
示談が成立すれば、不起訴処分(起訴猶予)になる可能性が高まります。
また、示談が成立すると、逮捕・勾留されていても、釈放される場合が多いです。
さらに、起訴されてしまったとしても、示談できているかどうかは、実刑を避けられるかどうかに大きく関わってくるため、弁護士は、起訴前に示談がまとまらなかったとしても、起訴後も引き続き積極的に示談交渉を行います。
(2)早期釈放のための活動
逮捕された場合、早期釈放に向けて弁護士が警察官や検察官と交渉します。
被疑者の反省の態度を示し、必要に応じて反省文を作成します。
真摯な反省により再犯の可能性が低いと判断されれば、勾留や起訴を回避できる可能性が高まります。
また、家族の監督など二度と侵入行為を行わないための環境づくりが、再犯防止の観点から重要となってきます。
釈放後の生活環境が整っているほど、更生しやすいと解釈されるためです。
弁護士は、ご親族への協力を求めるなど、その環境作りのサポートをしていくことになります。
加えて、住居侵入罪の場合、被害者の住所を知っているという事情があるので、被害者と接触するおそれがあると判断されてしまいます。
そのため、身体拘束から解放されるためには、弁護士から検察官・裁判官に対して被害者との接触の危険がないことを十分に主張していく必要があります。
(3)実刑の回避のための活動
住居侵入罪・建造物侵入罪で起訴されると、罰金刑または拘禁刑となります。
多くの事案は罰金刑(略式罰金処分)になりますが、悪質な犯行であれば実刑判決を受けるかもしれません。
中でも、他の犯罪を兼ねている場合、実刑の可能性が強まります。
起訴を回避できなかった際は、弁護士が罰金刑や執行猶予付き判決を求めて弁護します。
示談成立の事実や謝罪の意思、再犯防止の環境作りを伝え、刑罰を軽減するよう裁判官に主張します。
5 当事務所にご相談ください
自分や家族が刑事事件に巻き込まれた際に、「どこの法律事務所・弁護士に相談・依頼すればいいのか」ということは、非常に頭を悩ませる問題だと思います。
刑事事件は、普段から刑事事件を取り扱っていない法律事務所・弁護士に相談・依頼するのはリスクがあるでしょう。
そのため、刑事事件の弁護活動の経験が豊富な弁護士がいる法律事務所に相談・依頼することをお勧めいたします。
刑事事件の弁護活動の経験が豊富にある法律事務所・弁護士に相談・依頼すれば、早い段階で弁護方針が固まり、迅速に適切な行動が取れるようになります。
そのことによって、警察・検察の処分や裁判所の判決などを有利な方向に導く可能性が上がることになります。
当事務所では、刑事事件の弁護活動の経験が豊富な弁護士が複数対応しております。
刑事事件に巻き込まれた場合には、ぜひ当事務所にご相談ください。
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