1 器物損壊とは?

器物損壊罪は、「他人の物」を「損壊」または「傷害」した際に、成立する犯罪です。
法定刑は、3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金・科料となっています。

(1)「他人の物」

ここでの「物」には、ペットや家畜といった動物も含まれます。
また、自己の物であっても、差押えを受けている場合、物権を負担している場合(質権が設定されている場合など)、賃貸している場合などの場合においては、器物損壊罪が成立するという特則があります。

(2)「損壊」または「傷害」

「損壊」・「傷害」とは、財物の効用を害する一切の行為のことをいいます。
すなわち、物理的な損壊にとどまりません。
過去の裁判例においては、飲食店にて食器に放尿した事例や、いけすの鯉を流出させた事例において、「損壊」が認められています。
なお、客体が物の場合には「損壊」、動物の場合には「傷害」と区別されています。

(3)器物損壊の故意

器物損壊罪は、故意犯とされています。
過失により(うっかり)他人の物を壊してしまった場合には、器物損壊罪は成立しません。
よって、自動車運転中に、物損事故を起こしてしまった場合などには、故意にぶつけたのでない限り、器物損壊罪は成立しません。

なお、人身事故の場合には、過失運転致死傷罪が成立する可能性があります。
また、刑事責任と民事責任は区別する必要があり、過失による損壊の場合であっても、民事上の責任(損害賠償義務)は発生する可能性があります。

(4)親告罪

器物損壊罪は、親告罪です。
親告罪とは、被害者による告訴がなければ公訴を提起することができない種類の犯罪類型のことです。
そのため、被害者が告訴をしない場合や、示談により告訴を取り消してもらえた場合には、確実に不起訴処分となります。
一方で、起訴されてしまうと、起訴後に告訴を取り消すことはできなくなります。

2 器物損壊事件における刑事手続の流れ

逮捕された場合には、逮捕から48時間以内に事件が検察庁へ送られます。
検察官は、引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合には、事件を受け取ってから24時間以内に裁判官に勾留請求をします。
裁判官は、勾留する必要があると判断した場合には、勾留決定をします。
勾留期間は最大10日間ですが、それに追加して最大10日間勾留期間の延長がされることがあります。

器物損壊事件では、初犯である場合には、不起訴処分となるか、起訴処分となっても略式起訴(罰金)となる傾向にあります。
また、逮捕・勾留されず、在宅事件として、身柄拘束がされないまま、刑事手続が進むことも多いです。

3 器物損壊事件における刑事弁護

(1)罪を認めている場合

罪を認める場合には、被害者への謝罪や被害者との示談・被害弁償が重要となります。
財産犯では、一般に、被害者との示談が重要といわれていますが、器物損壊罪が親告罪であることから、示談の重要性は、より一層増します。

早期に被害者に連絡をし、被害弁償を行い、できることであれば、告訴の取消しまでしてもらうことが理想でしょう。

もっとも、自らの情報を加害者に提供することを嫌がり、情報開示を拒む被害者もいます。
そのような場合であっても、弁護士が加害者代理人として間に入り、交渉の窓口となることで、円滑な示談や被害弁償が可能となることが多いです。

(2)罪を認めていない場合

罪を認めない場合には、どういった理由により罪が成立しないと考えるのかを、捜査機関や裁判官に適切に伝える必要があります。

器物損壊の犯人ではないと争うのか、「損壊」に当たらないと主張するのか、器物損壊の故意が無かったと争うのかで、それらの主張を裏付けるのに必要な証拠も変わってきます。

4 弁護士にご相談ください

器物損壊を行ってしまった場合でも、被害者に対して誠意を示し、被害弁償をし、告訴の取下げまで行うことができれば、不起訴処分を獲得できることになります。

もっとも、身柄が拘束されている場合には、被害者と示談を進めることは容易ではなく、身柄が拘束されていない場合であっても、被害者本人との交渉は骨が折れるものです。
また、被害者から、法外な請求を受け、行き詰ってしまうことも少なくありません。
そのような場合でも、弁護士が窓口となって被害者とやり取りをすることで、適切な示談を成立させられる可能性があります。

器物損壊事件でお困りの方は、当事務所の弁護士にご相談ください。

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