1 出資法とは
出資法(「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」)は、金融取引における経済的弱者の保護と経済秩序の維持を目的とする法律です。
お金の貸し借りを行う場合、一般的にお金を借りる側(債務者)は、お金を貸す側(債権者)に比べて弱い立場にあります。
何も規制が無ければ、債権者は、その弱みに付け込むことで債務者に高額な利息や手数料を請求してくるでしょう。
そこで、出資法は、債務者を守るために、さまざまな規制を設けています。
また、金融機関の財政基盤が不安定なままであれば、私たちは安心して銀行に預金をすることができません。
裏を返せば、金融機関の財政基盤を安定させることで、預貯金者である一般市民は保護されることになります。
出資法には、規制により金融機関の財政基盤を安定させる側面もあります。
2 出資法違反に該当する行為
(1)出資金の受入れ
出資法1条は、不特定かつ多数の者に対して、後日出資の払い戻しとして出資金の金額以上の金銭を支払う旨を示して、出資金を受け入れることを禁止しています。
例として、「出資すれば、1年後に2倍にして返します。」「元本保証!必ず儲けます。」などという誘い文句で、出資を集めることが挙げられます。
(2)預り金
出資法2条1項は、法律で認められている者を除き、何人も業として預り金をすることを禁止しています。
すなわち、銀行・信用金庫・農業組合など法律に基づいて特別に認められている金融機関などを除き、預金・貯金を受け入れたり社債・借入金などの名目で金銭を受け入れたりすることは、認められません。
(3)浮貸し等
浮貸しとは、金融機関の役員・職員などが、その地位を利用し、自己または第三者の利益を図る目的で、金銭貸付け・金銭貸借の媒介・債務の保証をする行為です。
この行為は、出資法3条で禁止されています。
銀行の職員が、当該銀行に融資を求めたのに対し、自らの金銭を貸し付けた場合がこれにあたります。
このような行為は、金融機関の役職員によるサイドビジネスと言うことができ、浮貸しが横行すれば金融機関の信用失墜につながります。
出資法のような規制法があることで、私たちは金融機関に安心して預貯金を行うことができるのです。
(4)高額な金銭貸借等の媒介手数料
出資法4条1項は、金銭貸借の媒介を行う者が、媒介に係る賃借の金額の5%を超える手数料の契約・受領を禁止しています。
例えば、100万円を借りたい人に対して100万円を貸してもよいという人をつないであげた場合に、媒介手数料として5万円を超える手数料を受け取った場合がこれにあたります。
不当に高い媒介手数料は、債務者を経済的に圧迫するものにすぎないため、禁止されています。
(5)高金利の契約
出資法5条1項は、金銭の貸付けを行う者が、年109.5%(うるう年は109.8%)を超える割合による利息の契約をすることを禁じています。
出資法5条2項は、金銭の貸し付けを行う者が業として貸付けを行う場合、年20%を超える割合による利息の契約をすることを禁じています。
簡単にいえば、業者ではない一般人は、年109.5%(うるう年は109.8%)以内で、反復継続の意思を持って金融を行う業者は、年20%以内で利息を付する契約を行うことができます。
この制限を超える行為は、犯罪行為になります。
(6)高保証料の契約
出資法5条の2第1項は、金銭の貸付けを業として行う者が、利息と合計して年20%を超える割合による保証料の契約をすることを禁じています。
3 出資法違反の罰則
(1)各類型の罰則
出資金の受入れ違反(1条)、預り金の禁止違反(2条)、浮貸し等の禁止違反(3条)、金銭消費貸借等の媒介手数料の制限違反(4条)の罪には、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が予定されています。
拘禁刑と罰金が「併科」されること(同時に科されること)もあります。
金利の制限違反の罪(5条1項)には、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科が予定されています。
同様に、業として金銭の貸し付けを行う者が、年20%以内を超える金利の契約・受領・要求をした場合(5条2項)には、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科が予定されています。
業として金銭の貸し付けを行う者が、年109.5%を超える金利の契約・受領・要求をした場合(5条3項)には、10年以下の拘禁刑もしくは3000万円以下の罰金、またはこれらの併科が予定されています。
図解すると、次のようになります。

保証料の制限違反の罪(5条の2第1項)には、5年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらの併科が予定されています。
(2)両罰規定
出資法違反の行為が行われた場合、実際に行為を行った法人の従業員だけではなく、法人も刑罰を受けることがあります。
これを両罰規定といいます。
高金利の罪が行われた場合に法人に予定されている刑罰は3000万円以下の罰金刑、超高金利の場合には、1億円以下の罰金刑です。
その他の出資法違反の行為(浮貸しを除く。)が行われた場合にも、実際に行為を行った者と同じ範囲の刑罰が予定されています。
4 出資法違反事件の刑事手続の流れ
出資法違反で逮捕された場合には、逮捕から48時間以内に事件が検察庁へ送られます。
検察官は、被疑者から弁解を聞きます。
そこで、引き続き身柄を拘束する必要があると判断した場合には、事件を受け取ってから24時間以内に裁判官に勾留請求をします。
勾留請求を受けた裁判官は、勾留する必要があると判断した場合には、勾留決定をします。
勾留期間は最大10日間ですが、それに追加して最大10日間勾留期間の延長がされることがあります。
そのため、捜査段階では、逮捕から勾留までの最大72時間に勾留期間の最大20日間を加えた合計最大23日間、身柄が拘束される可能性があります。
検察官は、この期間内に捜査をし、起訴(略式起訴を含む)するかどうかの判断をすることになります。
起訴(公判請求)された場合には、公開の法廷で審理が行われます。
その中で、事実の有無や評価について、証明・主張していくことになります。
略式起訴された場合には、裁判官による書面審理が行われ、たいていは罰金刑が言い渡されます。
出資法違反事件では、背後に反社会的勢力が関わっていることも少なくなく、事前に警察や検察による緻密な内偵捜査が行われるようです。
そこで、出資法違反の疑いが明らかとなった場合には、身柄を確保されたうえでの捜査が進むものと思われます。
5 出資法違反事件の弁護活動のポイント
出資法違反事件に限ったことではありませんが、違法行為を行っているのであれば、早期に中止してください。
違法であることを認識したうえで、それでもなお違法行為を続けた場合には、悪質性が増し、処分も重くなります。
違法行為を中止したうえで、被害者と連絡を取り、被害弁償を行っていくことが有用です。
もっとも、犯罪被害者が行為者と直接連絡を拒むケースも少なくありません。
その場合は、弁護士が交渉の窓口となることで、スムーズに解決に向かうことが見込まれます。
また、被害弁償額の算定に当たっても、これまでの被害額の算定には複雑な算定を要することもあります。
その場合にも、弁護士が正確に事案を把握し、適切な損害額・賠償額を提示することで、被害者との示談・宥恕(罪を許してもらうこと)が可能となります。
被害弁償・示談・宥恕は、加害者と被害者との間で行われるものであって、検察官や裁判所にとっては、知らないところで行われているものです。
そのため、これらに成功した場合には、その旨を検察官や裁判所に適切に伝え、検察官による終局処分や裁判所による判決の際に、十分に考慮していただくよう主張する必要があります。
6 弁護士にご相談ください
出資法では、未然に事件の発生を防ぐために、比較的重い刑罰が予定されています。
事案の内容・程度によりますが、初犯でも実刑となることもあります。
出資法違反事件でお困りの方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。
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