1 銃刀法違反の罪について
銃刀法の基本的な趣旨は、正当な理由や許可なく「銃砲」や「刀剣類」といった人を殺傷する武器となり得るものを所持することを禁止して、社会の治安を維持することです。
(1) 銃刀法違反の規制内容
【1】銃砲とは
銃刀法第2条第1項によれば、銃砲とは「けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲及び空気銃(圧縮した気体を使用して弾丸を発射する機能を有する銃のうち、内閣府令で定めるところにより測定した弾丸の運動エネルギーの値が、人の生命に危険を及ぼし得るものとして内閣府令で定める値以上となるものをいう。)」とされています。
禁止される銃砲は、一定の基準に基づく測定結果によって殺傷能力が必要であり、その基準は内閣府令で定められています。
ここで規制対象となるのは、典型的にはけん銃や猟銃となります。
違法改造を施したモデルガンやエアガンの所持であっても、この基準を満たす場合には銃刀法違反となることに注意が必要です。
銃刀法第3条により、銃砲は所持が禁止されています。
【2】刀剣類とは
銃刀法第2条第2項によれば、刀剣類は、次のように整理することができます。
・刃渡り15センチメートル以上の刀
・やり及びなぎなた
・刃渡り5.5センチメートル以上の剣
・あいくち
・刃渡り5.5センチメートル以上で、45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ
刀剣類についても、銃刀法第3条により所持が禁止されています。
【3】刀剣類以外の刃物とは
銃刀法第22条によれば、刀剣類以外の刃物の所持について、「業務その他正当な理由による場合を除いて、刃渡り6センチメートルを超える刃物を携帯してはならない」とされています。
「業務その他正当な理由」は、次のようなケースが該当すると考えられています。
・店で刃物を購入し、それを自宅に持ち帰る場合
・キャンプやアウトドアで刃物を用いる場合
・調理師等職務で刃物を用いる人が、自宅から職場への通勤途上で刃物を携帯している場合
なお、護身用の携帯は正当な理由と認められていません。
また、銃刀法第22条の4により、模造刀剣類の所持も禁止されています。
模造刀剣類とは、金属で作られ、かつ刀剣類に著しく類似する形態を有する物で、内閣府令で定められる基準に合致するものをいいます。
模造刀剣類とは、典型的には、殺傷能力がない模造刀が該当します。
なお、刃渡り6センチメートル以下の刃物であっても、正当な理由なく殺傷能力がある器具を隠して携帯していた場合、軽犯罪法1条2号によって、拘留または科料の対象となることがありますので、注意が必要です。
(2) 銃刀法違反の罰則
【1】銃砲に関係する罰則
銃刀法第31条の3第1項により、けん銃の所持は、1年以上10年以下の拘禁刑、複数所持していた場合には1年以上15年以下の拘禁刑となります。
銃刀法第31条の11第1号により、猟銃の所持は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金刑となります。
【2】刀剣類に関係する罰則
銃刀法第31条の16第1号により、刀剣類の所持は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金刑となります。
【3】刀剣類以外の刃物に関係する罰則
刀剣類以外の刃物の所持に関する罰則は、次のようになります。
銃刀法第31条の18第2号の2により、刃渡り6センチメートルを超える刃物の場合、2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金刑となります。
銃刀法第35条2号により、模造刀剣類は20万円以下の罰金刑となります。
2 銃刀法違反事件における刑事手続の流れ
逮捕された場合、48時間以内に検察官に身柄が送られることになります。
身柄の送致を受けた検察官は、勾留の必要性を判断し、必要性がある場合には裁判官に勾留請求を行うことになります。
この勾留請求は、身柄の送致を受けてから24時間以内に行う必要があります。
勾留された場合、基本的には勾留請求された日から10日間の勾留となりますが、さらに10日間を限度として勾留の延長が認められています。
この勾留中に検察官は起訴・不起訴の判断を行い、正式起訴された場合には、公判が開始されることになります。
正式起訴された場合には、勾留が継続することになりますが、保釈請求を行うことにより、身柄釈放に向けた活動をすることができます。
一方で、正式起訴ではなく、略式起訴といった、簡略的に刑事処分を決める手続きに進むこともあります。
この略式起訴においては、罰金刑が宣告されることになります。
正式に公判期日は開かれませんので、書面のみの審理で、原則的に略式請求がされた日に罰金刑が言い渡されることになります。
略式起訴による罰金刑が言い渡された場合、身柄は釈放されることになりますが、罰金を納付する必要があります。
3 銃刀法違反事件における刑事弁護
事実関係を認める場合、次のように弁護活動を行っていくことになります。
銃刀法違反では、主に所持を処罰の対象としており、それらを用いて、誰かを殺傷したり、脅迫したりすることがなくても犯罪として成立します。
つまり、被害者がいない犯罪となりますので、被害者がいることを前提とする示談を行うことはありません。
そこで行うべき弁護活動は、犯罪に関係する事情について、情報収集を行い、有利な刑事処分を求めていくことになります。
具体的には、所持していた刀剣類や銃砲の種類、その危険性、重量や個数、所持の態様、所持に至った経緯、前科の有無(特に同種の前科)といった事情を依頼者や関係者から聴取していきます。
ご依頼を受けた弁護士は、これらの事情を基に、起訴前であれば検察官に対し弁護人としての意見を提出し、不起訴処分や略式起訴を目指していきます。
起訴後の場合には、裁判所に対して同様に弁護人としての意見を提出し、執行猶予判決や、検察官の求刑よりも減軽された刑事処分を求めていくことになります。
一方で、事実関係を争う場合、次のように弁護活動を行っていくことになります。
銃刀法違反で事実関係が争われる場合、典型的には刃物の所持に「正当な理由がある場合」があって、規制対象とならないとの主張を行うことが考えられます。
例えば、刃渡り6センチメートルを超える刃物を所持していたものの、それは草刈りを行うために所持しており、正当な理由があると主張し、無罪判決となった事例があります。
このような主張を行う場合、ご依頼を受けた弁護士は、所持していた刃物の形態や用途、刃物を所持するに至った経緯や所持の目的、所持していないときの保管状況、その人の職業や属性が刃物所持の正当性を基礎づけること等を丁寧に主張立証し、不起訴処分や無罪判決を目指していくことになります。
4 弁護士にご相談ください
銃刀法違反の刑事弁護においては、専門的な対応が必要なため、できる限り早期に弁護士にご相談いただくことをお勧めします。
銃刀法違反の刑事弁護についてお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談いただければと存じます。
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