1 軽犯罪法違反の概要

軽犯罪法とは、比較的軽微な犯罪に関する処罰を定めた法律です。

軽犯罪法1条は対象となる行為として33種類を列挙しており、これらに該当する行為を行った場合には拘留または科料が処されます。

拘留とは1日以上30日以下の期間、刑事施設に収容される刑であり、科料とは1000円以上1万円以下の財産刑です。
これらは、拘禁刑や罰金刑とは区別される比較的軽い刑ではありますが、他の刑罰同様、前科が付くという意味で、決して軽視できるものではありません。

対象となる行為は、刑法の定める犯罪の要件から漏れている行為(住居侵入罪の成立要件を満たさない建物への進入など)や刑法の定める犯罪の手前の準備行為(建物への進入に使用できる器具を隠して携帯することなど)、そのほか秩序を害する行為など(特定の場所における粗野な言動など)が挙げられています。

2 軽犯罪法違反に該当する典型的な行為

軽犯罪法は33種の類型で様々な行為を対象としているため、ここでは、問題になりやすいと思われる典型的な行為を挙げます。

・(銃刀法には該当しない)刃物を隠して携帯する行為(軽犯罪法1条2号)
・引火する危険のある場所でのたき火(同9号)
・公共の場所で大勢に対して著しく乱暴な言動で迷惑をかける行為(同13号)
・警察官などのコスプレ(同15号)
・(公然わいせつには該当しない)露出行為(同20号)
・浴場・トイレ等をひそかにのぞき見る行為(同23号)
・人の集まる場所での排泄(同26号)
・進路への立ちふさがりやつきまとい(同28号)
・悪戯などによる業務妨害(同31号)
・他人の家屋などへのはり紙(同33号)

3 軽犯罪法違反で逮捕されるか?

軽犯罪法違反は法定刑が軽く、このような犯罪については刑事訴訟法上、逮捕される場合が他の犯罪より限定されているため、軽犯罪法違反で逮捕される可能性は低いと考えられます。

具体的には、
①逮捕令状による逮捕の場合:住所不定の場合または正当な理由なく警察の出頭要求に応じない場合
②現行犯逮捕の場合:住所又は氏名不詳の場合、逃亡のおそれがある場合
のみ逮捕される可能性があります。

もっとも、現行犯であれば氏名不詳や逃亡のおそれといった要件を満たす場合もあるでしょうから、逮捕される可能性がないわけではありません。

4 軽犯罪法違反事件における刑事手続の流れ

軽犯罪法違反は逮捕される可能性が低いため、在宅事件(身柄拘束をしない事件)として進める場合が多いと思われます。

在宅事件の場合は、まず、警察において、被疑者を呼び出して取調べを行うといった捜査を行い、一通りの捜査が完了した時点で、事件を検察庁に送致します。
その後、検察官において、必要に応じて追加の捜査を行ったうえで、
・公判請求(正式裁判)
・略式起訴(簡易な手続きで科料のみ請求する場合)
・不起訴
といった処分を決定することになります。

なお、逮捕され、これに引き続いて最長20日間の勾留を受ける場合は、この期間内に捜査を行い、期間満了時に、同様に検察官において処分を決定することになります。

5 軽犯罪法違反事件における弁護活動

弁護活動の前提となるのは、軽犯罪法違反の事実や評価に間違いがないかという点です。
これらに間違いがある場合、軽微な刑とはいえ前科が付くのを甘受するべきではありませんから、事実や軽犯罪法の法解釈を争うことが考えられます。

これに対し、軽犯罪法違反の事実に間違いがなければ、できるだけ軽い処分を目指した弁護活動を行うことになります。
具体的な活動は軽犯罪法違反の内容によるところであり、まず、被害者のいる犯罪類型であれば当該被害者との示談が最も重要です。
被害者のいない類型の犯罪であれば、贖罪寄付といって反省を示すための寄付を行うといった対応が考えられます。
そのほか、再発防止のための環境調整なども考えられます。

6 弁護士にご相談ください

軽犯罪法違反は、刑の内容自体は比較的軽いものではありますが、前科の付く犯罪であることに変わりはありません。

そのため、軽犯罪法違反についても、弁護士のサポートのもと、慎重に対応していくことをお勧めします。
軽犯罪法違反についてお悩みでしたら、まずはお早めに、当事務所までご相談いただければと存じます。

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