1 強盗とは
(1)強盗罪
「強盗罪」は、他人に暴力を振るったり脅したりして、無理やり財産を奪う犯罪です(刑法236条)。
結果として、被害者が死亡・負傷したりする可能性が非常に高く、極めて危険かつ悪質な犯罪といわれています。
強盗罪における暴行や脅迫は、財産を奪う手段として行われるものですから、被害者による反抗を抑圧するに足りる程度であることが必要とされています。
反抗が抑圧されていたかは、社会通念上一般にそうであるといえるかどうか、といった客観的基準により判断されます。
仮に、反抗を抑圧するに足りる程度に至らない暴行・脅迫を加え、被害者が意思に基づいて交付した場合には、恐喝罪が成立するにとどまります。
また、反抗を抑圧するに足りる程度に至らない暴行・脅迫を手段として、財産を奪った場合には、暴行罪(または傷害罪)と窃盗罪の2罪が成立するにとどまります。
いわゆるひったくり事案がこれにあたりますが、暴行の程度や行為の危険性によっては、強盗罪が成立する可能性もあります。
また、強盗によって奪われる財産は、現金、貴金属、自動車というような目に見える「財物」に限られません。
現実には目に見えない「財産上の利益」も対象です。
そのため、いわゆるタクシー強盗の場合にも、強盗罪が成立します。
すなわち、乗車料金の支払いを免れるためにタクシー運転手に「暴行・脅迫」を行い、隙を見て逃走することにより、「乗車料金の支払いを免れる」という「財産上の利益」を得ているため、強盗罪が成立します。
(2)事後強盗罪
強盗罪は、暴行・脅迫→財産を奪う、という流れです。
財産を奪ったあとで、捕まえようとする者から逃げるために暴行・脅迫を加えた場合、財産を奪う→暴行・脅迫という順番になるため、強盗罪は成立しません。
しかしながら、暴行・脅迫行為+財産を奪う行為という点では同じであり、通常同程度の悪質性があると評価できます。
この場合には、「事後強盗罪」という強盗罪とは別の罪が成立します(刑法238条)。
事後強盗罪の成立にあたっては、暴行・脅迫と奪取行為との時間的・場所的結び付きや、逮捕を免れる目的などの、強盗罪と同視するための特有の要件が必要です。
事後強盗罪が成立した場合、強盗と同様に扱われます。
例えば、事後強盗罪に対して法律上予定されている罰則の範囲は、強盗罪に対するものと同じです。
(3)昏睡強盗罪
睡眠薬などで一時的に気を失わせて物を盗った場合、「昏睡強盗罪」が成立します(刑法239条)。
昏睡させる行為は、暴行・脅迫とはいえないため、強盗罪は成立しません。
しかしながら、昏睡させるという手段は、暴行・脅迫と同視できるため、昏睡強盗罪が成立した場合、強盗と同様に扱われます。
(4)強盗致死傷罪
強盗の際の暴行により、被害者が怪我を負ったり、亡くなったりすることは少なくありません。
その場合に成立する罪が、強盗致死傷罪(刑法240条)です。
強盗致死傷罪のなかには、①強盗がうっかり怪我をさせた「強盗致傷罪」、②強盗がうっかり人を死亡させた「強盗致死罪」、③強盗がわざと怪我をさせた「強盗傷人罪」、④強盗がわざと死亡させた「強盗殺人罪」の4つが含まれています。
強盗致死傷罪にいう「強盗」には、強盗罪にいう強盗のほか、事後強盗や昏睡強盗も含まれます。
2 強盗事件の罰則
「強盗罪」、「事後強盗罪」、「昏睡強盗罪」が成立する場合、法律上、5年以上の有期拘禁刑が予定されています。
強盗が人を負傷させたため、「強盗致傷罪」や「強盗傷人罪」が成立する場合は、無期拘禁刑または6年以上の有期拘禁刑が予定されています。
強盗が人を死亡させたため、「強盗致死罪」や「強盗殺人罪」が成立する場合は、死刑または無期拘禁刑が予定されています。
執行猶予の要件として、言い渡すべき刑が3年以下の拘禁刑であることが挙げられます。
そのため、強盗罪で有罪になった場合、酌量減軽をはじめとする減軽が無ければ、初犯であっても刑務所に収監されることになります。
一方で、減軽があれば、言い渡される刑の下限が(法律上の下限である5年の半分の)2年6月となるので、執行猶予を付けられることがあり得ます。
このように、強盗事件の罰則には、罰金刑は予定されておらず、減軽処理がされなければ実刑になる可能性が高いため、強盗事件の罰則は非常に重いものといえます。
3 強盗事件の刑事手続の流れ
強盗事件が捜査機関により認知された場合、重大犯罪であるため、罪証隠滅や逃亡のおそれが高いとして、逮捕・勾留されることが比較的多いです。
逮捕された場合には、身体拘束をされた時から48時間以内に検察官に送致され、検察官は被疑者を受け取った時から24時間以内に勾留請求をします。
勾留請求を受けた裁判官は、引き続き身体拘束を行う必要性があると考えた場合には、10日間の勾留決定をします。
この勾留期間は、最大10日間延長されることがあります。
この合計23日間の間に、捜査機関は捜査を行い、最終的な処分(終局処分)を下します。
終局処分において、不起訴処分となった場合には、その時点で身柄が釈放され、刑事事件としては終了します。
起訴処分(公判請求)となった場合には、引き続き身柄が拘束され、裁判所で審理されることになります。
公判では、検察官・弁護人が双方の立場から主張や証拠の提出を行い、裁判官により有罪・無罪の判決が言い渡されることになります。
強盗罪・事後強盗罪・昏睡強盗罪で起訴された場合には、通常の事件のように、裁判官による裁判が行われます。
一方で、強盗致傷罪・強盗致死罪・強盗傷人罪・強盗殺人罪で起訴された場合には、裁判員裁判対象事件となります。
その場合には、初公判の前に公判前整理手続という手続に付されます。
公判前整理手続では、充実した公判の審理を継続的、計画的かつ迅速に行うために、事件の争点や証拠の整理が行われます。
この手続が終わった後には、原則として証拠の追加の提出はできません。
4 強盗事件の刑事弁護のポイント
(1)罪を認めている場合
強盗罪は、被害者の財産及び被害者の生命・身体・自由を保護する犯罪です。
強盗行為によりそれらを侵害したわけですから、損害の賠償や慰謝を中心とする示談を行うことが有効です。
被害者との間で示談が成立した場合には、検察官による不起訴処分や、起訴されている場合には、酌量減軽による執行猶予判決が見込まれます。
裏を返せば、示談ができなければ、検察官により起訴処分がとられ、酌量減軽されずに実刑判決が下される可能性は高まります。
このように犯人側に示談の意向がある場合でも、被害者は強盗被害により心身ともに被害を受けているわけですから、犯人本人と交渉を行いたくないと、連絡を拒むこともよくあります。
そのような場合には、弁護人が交渉の窓口になることで、スムーズな交渉が可能となる場合があります。
(2)罪を認めていない場合
罪を認めない理由にも、さまざまなものがあります。
・そもそも、犯人は私ではない。
・軽く触れただけで、反抗を抑圧するに足りる程度の暴行ではない。
・犯行当時、精神疾患により、正常な判断能力がなかった。
罪を認めない理由に応じて、適切に主張を行う必要があります。
特に、強盗致傷罪など裁判員裁判対象事件の場合には、公判前整理手続に付される関係上、より一層綿密な主張構成や証拠の収集・提出が必要となります。
弁護士の能力が問われる一面といえるでしょう。
5 弁護士にご相談ください
強盗事件は、法律上予定されている罰則が重く、有罪判決が下された場合に実刑となる可能性が高いと言えます。
罪を認める場合、認めていない場合、いずれの場合であっても、早期に弁護士に相談し、活動を進めていくことが大事です。
当事務所には、裁判員裁判対象事件の経験のある弁護士も複数在籍しております。
強盗事件でお困りの方は、ぜひ当事務所の弁護士にご相談ください。
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