1 同意殺人罪(嘱託殺人罪・承諾殺人罪)とは
同意殺人罪は、刑法202条に定められた犯罪のひとつで、「嘱託殺人罪」と「承諾殺人罪」を合わせた呼び方です。
「嘱託殺人罪」は、被害者の側から「殺してほしい」と積極的に頼まれ、それに応じて手を下した場合に成立します。
一方、「承諾殺人罪」は、被害者自らが進んで頼んだわけではないものの、行為者からの働きかけに対して「それでもよい」と受け入れた場合を指します。
頼んだのが被害者本人か、被害者が同意しただけかという違いはありますが、いずれも被害者の意思に基づいて命を断つ行為である点は共通しており、法律上は同じ罪として扱われます。
大切なのは、この罪が成立するためには、被害者が自分の死という重大な結果を本当に理解したうえで、自らの意思で依頼または同意していたといえることです。
こうした事情がなければ、通常の殺人罪が問題となります。
2 同意殺人罪(嘱託殺人罪・承諾殺人罪)の成立要件と罰則
同意殺人罪が成立するには、被害者の嘱託または承諾が、真に本人の意思に基づくものであったことが必要です。
行為者が事実と異なることを伝えて信じ込ませたり、暴力や脅しによって意思決定の自由を奪ったりして得た同意は、真意に基づく同意とは言えません。
このような場合は、同意殺人罪ではなく、刑法199条の通常の殺人罪が成立します。
同意殺人罪の罰則は、6月以上7年以下の拘禁刑とされており、自殺関与罪と同じ重さです。
未遂(相手を殺害するに至らなかった場合)でも処罰の対象となります。
なお、通常の殺人罪の罰則は、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑とされており、同意殺人罪の罰則とは大きな開きがあります。
この差は、被害者自身が命を断つことを自ら望み、または同意していたという事情があることで、失われた利益の重大性が相対的に軽く評価されるためです。
3 同意殺人(嘱託殺人・承諾殺人)事件の刑事手続の流れ
同意殺人事件は人の命が失われている重大事件であるため、警察・検察の捜査も時間をかけて慎重に進められる傾向にあります。
逮捕された後の手続の流れ自体は、他の刑事事件と基本的に同じです。
警察は逮捕から48時間以内に、送致(事件を検察官に引き継ぐこと)をするかどうかを判断します。
送致を受けた検察官は24時間以内に、裁判所に勾留を請求するかどうかを判断します。
勾留が認められれば、原則10日間、必要に応じてさらに10日間、身柄拘束が続く可能性があります。
この間、警察・検察は取調べや現場検証、関係者からの聴取などを行い、被害者の嘱託・承諾が真実に存在したのかを慎重に確かめたうえで、起訴するか不起訴とするかを判断します。
起訴されれば公開の法廷で審理が行われ、判決に至ります。
4 同意殺人(嘱託殺人・承諾殺人)事件の刑事弁護のポイント
人の命が失われている事件である以上、まずは長期の身柄拘束を避けるための活動が必要になります。
逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを具体的に主張し、勾留を避けることや、やむを得ず勾留された場合の保釈を目指します。
次に、この類型の事件では、被害者の嘱託・承諾が本当にあったのか、それが真意に基づくものだったのかを裏付ける証拠を集めていくことが重要です。
本人が残した遺書やメモ、メールやSNSのやりとり、周囲の人の証言などを丁寧に積み上げ、単なる殺人罪ではなく同意殺人にあたる事案であることを主張していく必要があります。
逆に、同意の存在自体が不明確だったり、真意に基づくものではなかったとされたりすれば、より重い通常の殺人罪に問われるなど、事態が悪化する可能性もあるため、事実関係の整理は慎重に行う必要があります。
さらに、介護疲れや長年の看病といった背景事情を丁寧に立証し、適正な処分・量刑や執行猶予の獲得を目指すことも弁護活動の重要な柱となります。
これと並行して、ご遺族への謝罪や示談の申し入れも欠かせません。
大切な人を失ったご遺族の心情に配慮しながらも、誠実な対応を重ねることが、不起訴や執行猶予の獲得に向けて大きな意味を持ちます。
5 同意殺人(嘱託殺人・承諾殺人)の刑事弁護は当事務所にご相談ください
大切な方の死に関わったとして同意殺人の疑いをかけられた場合、ご本人もご家族も、どのように向き合えばよいのか分からないまま、強い不安を抱えておられることと思います。
事件に至った経緯や背景は事案ごとにさまざまであり、見通しも大きく異なります。
まずは実際の状況をお聞きしたうえで、今後とるべき対応をご提案させていただきます。
同意殺人(嘱託殺人・承諾殺人)の刑事弁護は、当事務所の弁護士にご相談ください。
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